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憲法

平成25年予備試験 憲法論文

答案例

第1 Dの主張
1 甲案につき、政党の公認候補を選出する自由(以下、「自由1」という。)を侵害し、違憲であると主張する。
(1) まず、政党は一定の理念の下、国会議員が継続的かつ自主的に集まった団体であるから、「結社」(21条1項)といえる。そして、政党国家現象の下、公認候補を擁立することは政党の活動の根幹をなすものといえるから、自由1は結社の自由(21条1項)で保障される。
(2) 次に、甲案により該当の選挙区では公認候補を擁立できないので、自由1に対する制約がある。
(3)
ア そして、政党の存続・運営にはその構成員たる国会議員が選挙で継続的に当選することが必要不可欠である。よって、自由1は重要な権利である。
イ また、甲案により該当選挙区で一切公認候補を擁立できないので、規制態様は強度である。
ウ そこで、厳格に判断する。
(4) これを本件についてみると、甲案の目的は選挙の公正確保にある。世襲議員が選挙において一般の新人候補より有利とはいえ、議員の適格性は最終的に有権者各々の価値観により判断されるので、世襲議員の優位性は選挙の公正を害するほどのものといえず、手段に必要性がない。
(5) 以上より、甲案は21条1項に反し違憲である。
2 乙案につき、世襲議員として立候補する自由(以下、「自由2」という。)を侵害し、違憲であると主張する。
(1) まず、15条1項は選挙の自由を保障しているところ、立候補の自由は選挙権の自由な行使と表裏の関係にあるから、自由2は同項で保障される。
(2) 次に、乙案により該当の選挙区で立候補ができないので、自由2に対する制約がある。
(3)
ア そして、自由2は自己の人格を発展させるという自己実現の価値及び政治的意思決定に関与する自己統治の価値を有する重要な権利である。
イ また、乙案により該当の選挙区で立候補が一切できないので、規制態様は強度である。
ウ そこで、厳格に判断する。
(4) これを本件についてみると、乙案の目的は甲案と同じであるところ、甲案と同様に手段に必要性がない。
(5) 以上より、乙案は15条1項に反し、違憲である。
第2 反論
1 甲案への反論
(1) 政党が公認候補者を擁立する自由は21条1項で保障されない。
(2) 政党は国民の政治的意思形成に必要不可欠の存在であるから、公的な役割を担っている。よって、国民の国会への意思反映のために政党の活動は一定の制約を受けるから、権利の重要性は相対的に低下する。そこで、緩やかに判断する。
(3) 選挙で当選にするには後援会組織、選挙資金、知名度が重要な要素である。よって、手段に必要性がある。
2 乙案への反論
(1) 乙案では該当選挙区以外の選挙区では立候補できる。よって、規制態様は強度といえない。
(2) 甲案と同様手段に必要性がある。
第3 私見
1 甲案
(1) 政党は国家議員で構成されるので選挙で所属の議員を当選させることは政党存続のために必要不可欠である。そして、公認候補は当選すれば公認を受けた政党に入る可能性が高い。そのため、自由1は政党の活動の根幹をなすので、自由1は結社の自由の一環として保障される。
(2) また、原告の主張する通り自由1に対する制約がある。
(3)
ア もっとも、上記自由は無制限に認められず、公共の福祉(12条後段、13条後段)による制約を受ける。自由1はDの主張する通り政党運営に密接に関わる権利であるが、反論のとおり政党の公共性に鑑みれば一定の規制を受ける権利である。
イ また、原告主張のとおり規制態様は強度である。
ウ そこで、厳格な審査基準で判断する。具体的には目的が必要不可欠で、手段が必要最小限度であれば正当化される。
(4)
ア これを本件についてみると、まず、甲案の目的は原告主張する通り選挙の公正確保にある。かかる目的は民主主義の基礎をなすものであるから、必要不可欠である。
イ 次に、反論のとおり世襲議員は選挙で有利であるが、世襲議員自身の自助努力も相まって有利になっている面もある。そして、有権者はそのような事情を踏まえて世襲議員の資質を判断している。よって、世襲議員の優位性が選挙の公正が害するほどのものとはいえず、手段に必要性がない。
(5) 以上より、正当化されず、甲案は違憲である。
2 乙案について
(1) D主張のとおり、自由2は保障され、それに対する制約がある。
(2) そして、他の選挙区で立候補をすることは候補者に強度な金銭的・戦術的負担を強いるので、規制態様は強度である。そこで、自由1と同様の基準で判断する。
(3)
ア これを本件についてみると、乙案の目的は甲案と同じであり、必要不可欠である。
イ 次に、反論のとおり世襲議員は選挙で有利な面がある。しかし、誰でも立候補できることが民主主義の根幹をなすから、世襲議員の立候補を制限することは過度な手段である。よって、必要性がない。
(4) 以上より正当化されず、乙案は違憲である。

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