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労働法

令和1年司法試験 労働法論文第2問

答案例

第1 設問1
1 X組合は本件ビラ撤去が支配介入(労組法7条3号)あたることを理由に、労働委員会に対し、ポストノーティスを、裁判所に対し不法行為に基づく損害賠償請求を求める。
2 X組合は本件ビラを、本件労働協約28条違反を理由に同29条に基づいて撤去している。そこで、本件ビラは同28条に該当するか。
(1) 「会社の信用を傷つけ」といえるか。
ア X組合は同27条に基づいて掲示板を利用している。そして、使用者と労働組合という立場上、労働組合の掲示板利用で使用者にとって都合の悪い事項を載せることは想定されている。また、本件掲示板はY社員以外の第三者が目にする場所ではないと考えられるので、会社の第三者による評価を下げるものではない。
イ よって、上記に該当しない。
(2) 「個人をひぼうし」といえるか。
ア 本件ビラはセクハラ行為の主体を「上司」と表現しており、その者を特定していない。
イ よって、上記に該当しない。
(3) 「事実に反し」といえるか。
ア 本件セクハラの存否は会社側委員と組合側委員で意見が相違しており、真偽は不明であるから、上記に該当しない。
イ また仮に、本件セクハラの事実がなかったとしても、労働者の救済という正当な目的があり、掲示内容を主張する合理的な理由があれば「事実に反し」とはいえないと解する。これを本件についてみると、Aにつき加算ゼロとする根拠が不明確であったから、X組合が本件セクハラを主張する合理的な理由があった。また、Aの救済という目的もあった。よって、仮に本件セクハラの事実がなくても、上記に該当しない。
ウ さらに、Aの賞与に関する事項は労働条件に関するもので、かつ使用者が解決可能なものであるから、義務的団交事項(労組法7条2号)にあたる。また、Y社の拒否には正当な理由がない。よって、上記に該当しない。
(4) 「職場規律を乱す」といえるか。
ア X組合は苦情処理委員会の内容を紹介しているので、本件労働協約51条に反し、職場規律を乱しているとも思える。しかし、同条の趣旨は「関係者」のプライバシー保護にあるところ、本件ビラはAのプラシバシーを侵害する内容とまではいえない。
イ よって、上記に該当しない。
(5) また、かかる事情を考慮すればY社に反組合な認識たる支配介入の意思もある。
(6) 以上より同28条に該当しないので、Y社の対応は支配介入にあたり、救済を求めることができる。
第2 設問2
1 X組合は本件労働協約の解約は支配介入にあたることを理由に、労働委員会に本件労働協約の再締結を命ずる旨の申立てを、裁判所に対し不法行為に基づく損害賠償請求を求める。
2 本件労働協約は期間の定めのないものであるから、Y社の解約予告は適法である(労組法15条)。もっとも、解約予告との適法性と、支配介入該当性は別次元の問題である。そこで、本件解約は支配加入にあたらないか。
(1) 本件労働協約の内容たる本件チェックオフは労使間の交渉に基づくものであるから、継続するか否かは原則使用者の裁量に委ねられる。もっとも、組合員からの簡易迅速な組合費徴収手段であるチェックオフは組合の安定的な活動を支える重要なものである。そうであれば、一旦締結されたチェックオフを使用者側が解約するには合理的な理由が必要であると解する。
(2) これを本件についてみると、X組合が本件労働協約を解約した理由は春闘の団体交渉が難航したことにある。しかし、団体交渉は利益相反関係にある当事者の交渉であるから、難航することは異常な状態とはいえない。むしろ、何回も交渉を重ねた結果合意に至ることを期待して我慢強く交渉に臨むべきである。そうであればかかる理由は本件労働協約を解約する合理的な理由といえない。また、かかる事情を考慮すればY社に支配介入の意思がある。
(3) よって、本件解約は支配介入にあたり、上記救済を求めることができる。

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