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民事訴訟法

平成22年旧司法試験 民事訴訟法論文第2問

答案例

第1 小問1
1 控訴が適法といえるには控訴の利益が認められなければならない。そこで、本件控訴に控訴の利益が認められるか、その判断基準が問題となる。
(1) 勝訴判決を得たものが控訴することは矛盾挙動である。また、基準の明確性を重視すべきである。そこで、控訴の利益は、当事者の申立てと原判決の主文を比較して、後者が前者に及ばない場合に認められると解する。
(2) これを本件についてみると、本件訴訟ではXの全部認容判決がなされ、Xは遅延損害金の請求をしていなかったのである。よって、本件判決の主文はXの申立てに及ばない場合ではない。
(3) よって、Xに控訴の利益が認められない。なお、遅延損害金の請求権は本件訴訟の訴訟物とは異なるので既判力が及ばない。そのため、Xに控訴を認めなくてもXは別訴を提起できる。
2 以上よりXの控訴は適法でない。
第2 小問2(1)
1 裁判所の結論に従えば、裁判所は第一審判決を取り消し、予備的請求の認容判決をすべきである。また、本件控訴は第一審の主位的請求の認容判決に対してなされており、主位的請求は移審しているところ、控訴不可分の原則により予備的請求も移審している。もっとも、第二審で予備的請求を認容することはYの審級の利益を害しないか。
(1) 主位的請求と予備的請求は両立しない関係にあるので、事実の共通性が高い。そのため、本件では予備的請求についても第一審で当事者に手続保障が及んでいる。
(2) よって、Yの審級の利益を害しない。
2 以上より控訴裁判所は上記判決をすべきである。
第3 小問2(2)
1 裁判所の結論に従えば、裁判所は第一審判決を取り消し、主位的請求の認容判決をすべきである。また、前述と同様に両請求は移審する。もっとも、本件ではYのみが控訴しており、Xは附帯控訴(293条)もしていない。そこで、主位的請求を認容することは許されるか。
(1) 処分主義(246条参照)の下、不服申し立てに対して原判決より不利に判決をすることはできない(不利益変更禁止の原則、304条)。
(2) これを本件についてみると、Xは予備的請求の棄却を求めているところ、主位的請求を認めることはXにとって第一審判決より不利になる。
(3) よって、主位的請求を認容することは不利益変更にあたり許されない。
2 以上より、控訴裁判所は第一審の主位的請求の全部棄却判決を維持し、第一審の予備的請求の認容判決を取り消し、予備的請求の棄却判決をすべきである。なお、Xは控訴の利益があるにもかかわらず控訴をせず、附帯控訴もしなかったのであるから、このような結論をとってもXに酷ではない。

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