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刑事訴訟法

平成11年旧司法試験 刑事訴訟法論文第1問

答案例

第1 設問1
1 勾留ができるためには逮捕前置主義を守る必要がある。本件では勾留の前置として逮捕がされているが、この逮捕は現行犯逮捕の要件を充足していない違法逮捕である。そこで、違法逮捕の場合にも逮捕前置主義が守られているといえるか。違法逮捕に続く勾留請求の可否が問題となる。
2
(1) 逮捕前置主義の趣旨は、身柄拘束が重大な人権侵害を伴うことに鑑み、逮捕・勾留の二段階で司法的抑制及ぼすことで不当な身柄拘束を防止する点にある。それ故、前置される逮捕は当然に適法であることを要する。よって、違法逮捕の続く勾留請求は原則できないと解する。
(2) もっとも、軽微な違法逮捕の場合まで勾留請求ができないとすると、身柄拘束による実効的な捜査が著しく害される。そこで、逮捕につき令状主義(憲法33条、刑訴法199条1項)の精神を没却するような重大な違法が場合に、その逮捕に続く勾留請求はできないと解する。
3 これを本件についてみると、甲の逮捕は現行犯逮捕の要件が欠けていたので、違法である。しかし、緊急逮捕の要件は備わっていた。そのため、甲は現行犯逮捕されなくても、緊急逮捕により身柄拘束をされていた可能性があった。よって、本件逮捕の時点で緊急逮捕の要件が存在し、かつその時点から起算して刑訴法所定の制限時間内に勾留請求がなされていれば重大な違法がないと解する。
4 以上より、上記の場合には逮捕前置主義が守られ、甲を勾留することができる。
第2 設問2
1 前述の通り、勾留請求には適法な逮捕の前置が必要であるところ、本件では再逮捕がされている。そこで、このような場合でも勾留請求できるか。再逮捕の可否が問題となる。
2
(1) 厳格な身柄拘束期間を規定している刑訴法の規定(203条ないし205条、208条、208条2の)の趣旨及び将来の違法捜査抑止の観点から、先行違法が場合の再逮捕は原則許されないと解する。
(2) もっとも、このような場合に常に再逮捕ができなければ、身柄拘束による実効的な捜査が著しく害される。また、刑訴法199条3項は再逮捕ができることを前提としている。そこで、①先行する逮捕の違法性が著しく重大でなく、②犯罪が重大であり、③再逮捕を許さないことで捜査に重大な支障をきたす場合に例外的に再逮捕に続く勾留請求ができると解する。
3 これを本件についてみると、先行逮捕は緊急逮捕の要件を備えていたので、違法性が著しく重大とはいえない(①)。また、窃盗罪(刑法235条)は法定刑として10年以下の懲役を含む重大犯罪である(②)。さらに、甲の身柄拘束をしなければ罪証隠滅及び逃亡のおそれがあるので、再逮捕をゆるさなければ捜査に重大な支障をきたす。(③)。
4 よって、本件再逮捕は適法であるから、本件勾留をすることができる。

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