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民事訴訟法

平成13年旧司法試験 民事訴訟法論文第1問

答案例

1 弁論主義とはいかなるものか。
(1) 弁論主義とは判決の基礎となる事実と証拠の収集・提出を当事者の権能かつ責任で行う建前をいう。弁論主義の根拠は、実体法上の財産権の権利関係においては私的自治が妥当するところ、これに関する民事訴訟でも私的自治が妥当し、当事者の意思の尊重をすべきという点にある。また、弁論主義の機能は、裁判所が当事者の主張しない事実を認定しないという、不意打ち防止にある。
(2) また、弁論主義は、裁判所は当事者が主張していない事実を判決の基礎とすることができないという第1テーゼ、当事者が争わない事実をそのまま判決の基礎としなければならない第2テーゼ、及び証拠による事実認定は当事者が申し出た証拠によらなければならないという第3テーゼからなる。
(3) そして、弁論主義の機能たる不意打ち防止の観点から、弁論主義は訴訟の勝敗に直結する事実、すなわち、法律効果の判断に直接役立つ具体的事実(直接事実)に及ぼせば十分である。また、弁論主義は自由心証主義の例外であるから、限定的に解すべきである。そこで、弁論主義は証拠と同様の機能を有する間接事実及び補助事実に及ばず、主要事実のみに及ぶと解する。
2 これに対し、自由心証主義(247条)はいかなるものか。
(1) 自由心証主義とは、裁判所の事実認定において証拠方法の選択及び証拠力の評価について法律上何等の拘束を受けず裁判官の自由な判断に委ねる建前をいう。そして、自由心証主義の内容には証拠方法の無制限、弁論の全趣旨のしん酌、証拠力の自由評価がある。
(2) また、自由心証主義は紛争解決に必要なすべての事実に及ぶのではなく、当事者が弁論主義の枠内で主張した事実に及ぶ。
3 そこで、弁論主義は自由心証主義の適用範囲へどのような影響を及ぼすか。
(1) 第1テーゼ
ア 裁判官が証拠によりある事実がある心証を得ても、当事者のその事実を主張していなければその事実を判決の基礎とすることができない。
イ よって、第1テーゼは自由心証主義による事実認定の対象を提供し、かつ限定するという影響をもたらす。
(2) 第2テーゼ
ア 当事者が争わない、ある事実を裁判所が存在しない心証を得ても、かかる事実を判決の基礎にしなければならない。
イ よって、第2テーゼは自由心証主義の対象を当事者が争う事実に限定するという影響をもたらす。
(3) 第3テーゼ
ア 裁判所は当事者が争っている、ある事実が存在する心証を得ても、それが、当事者が提出した証拠によって認定されていなければその事実を認定できない。
イ よって、第3テーゼは裁判官が評価する証拠を提供し、かつ限定するという影響をもたらす。

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