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民事訴訟法

平成2年旧司法試験 民事訴訟法論文第2問

答案例

1 甲は乙に対し、別訴でB建物収去C土地明渡訴訟(以下、「C請求」という。)を提起する方法が考えられる。そこで、かかる別訴は二重起訴(142条)に反しないか。「事件」の同一性の判断基準が問題となる。
(1) 同条の趣旨は訴訟不経済、被告の応訴の煩、既判力抵触の恐れにある。そこで、「事件」が同一とは当事者及び審判対象が同一であることを意味すると解する。
(2) これを本件についてみると、前訴後訴共に甲及び乙が当事者である。しかし、前訴の訴訟物は所有権に基づく返還請求権としてのA建物明渡請求権であり、後訴の訴訟物は所有権に基づく返還請求権としてのB建物収去C土地明渡請求権であるから、両者は異なる。
(3) よって、「事件」の同一性が認められず、二重起訴に反しない。したがって、別訴提起することができる。
2 そうだとしても、甲の主張と乙の主張は併存しえない関係にあるので、甲は既存の請求にC請求を追加的に変更(143条1項)すれば甲は訴訟活動を有利に進めることができる。そこで、かかる追加的変更が認められるか。「請求の基礎に変更がない」の意義が問題となる。
(1) 同項の趣旨は被告の防御対象が原告の一方的な都合により変更され、不利益を被ることを回避する点にある。そこで、「請求の基礎に変更がない」とは、①旧請求の訴訟資料を新請求の審理に継続利用でき、かつ②両請求の利益関係が社会生活上共通である場合を指すと解する。
(2) これを本件についてみると、旧請求では建物の所有権の帰属を、新請求ではC土地のそれが主要な争点となると考えられるから、訴訟資料は異なる(①不充足)。また、旧請求は建物所有権を、新請求では土地所有権の行使を目的とした訴訟であるから、利益関係が異なる(②不充足)。
(3) よって、「請求の基礎に変更がない」とはいえず、追加的変更は許されないとも思える。
3 もっとも、同条の趣旨に鑑み、追加的変更が例外的に許容されないか。
(1) 訴えの変更で、被告に不利益が生じない場合、すなわち被告の陳述した事実に起因する訴えの変更の場合は「請求の基礎に変更がない」の要件は不要であると解する。そして、かかる事実は抗弁だけでなく、積極否認の内容となる重要な間接事実も含む。
(2) これを本件についてみると、甲は乙がB建物の存在及びその所有者である旨を主張したので、C請求の追加的変更を申し立てている。そのため、かかる変更を認めても乙の防御に不利益は生じない。
(3) よって、訴えの変更の他の要件を充足すればC請求の追加的変更は許される。

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