答案例
第1 小問1
1 補助参加人は上訴の提起をすることができる(45条1項)から、Zは本件控訴をすることができるとも思える。もっとも、控訴は判決書送達後2週間以内に提起しなければならない(285条)ところ、本件控訴はZへの送達後2週間以内であるが、Yへの送達後2週間を経過している。そこで、本件控訴は許されるか。補助参加人の控訴期間の起算点が問題となる。
(1) 補助参加人は自己固有の利益を保全するために参加する者であり、また補助参加人は独立して訴訟行為ができる(45条1項本文参照)から、補助参加人の控訴の起算点は補助参加人を基準とすべきとも思える。しかし、補助参加人は補助参加時の訴訟の程度に従いすることができない訴訟行為はできない(同条項ただし書)。そうであればこのような従属性がある補助参加人の控訴期間は被参加人の控訴期間に倣うべきである。そして、このように解しても、46条4号により補助参加人に訴訟の効力が及ばない可能性があるので、補助参加人に酷ではない。
(2) これを本件についてみると、Zは補助参加しており、Y基準で控訴期間が満了している。
(3) よって、本件控訴時に控訴期間が満了している。
2 以上より、本件控訴は違法である。
第2 小問2
1 Y敗訴の判決は確定したので、前訴の判断内容の後訴における拘束力(既判力)が生じるところ、Zは前訴の当事者(115条1項1号)でなく、同条項2号ないし4号にも該当しないので、YZ間の訴訟に本件Y敗訴の判決の既判力は及ばない。もっとも、46条の「効力」がYZ間の訴訟に及ばないか。46条の「効力」の法的性質が問題となる。
(1) 同条の趣旨は補助参加人が被参加人と共同して訴訟追行をしたことに鑑み、被参加人敗訴の場合の責任を共同して分担するという公平の理念の実現にある。そのため、同条の「効力」は既判力とは異なる効力(参加的効力)であると解する。そこで、参加的効力は、①被参加人敗訴の場合に、②被参加人及び補助参加人間に生じ、③判決主文における訴訟物判断のみならず、判決理由中の判断にも生じると解する。もっとも、基準の明確性の要請から、理由中の判断については判決主文を導き出すために必要な主要事実の認定及び法律判断に限ると解する。
(2) これを本件についてみると、
ア Yは敗訴している(①)。
イ YZ間の訴訟は被参加人と補助参加人の訴訟である(②)。
ウ XY間の訴訟の訴訟物は保証債務履行請求権であり、YZ間の訴訟物は求償金請求権であるところ、前者の理由中ではXZ間の主債務の存在が認定されている。そして、主債務の存在は前者訴訟物の存否の判断に直接必要な具体的事実(主要事実)である。よって、主債務の存在は前者の判決主文を導くための主要事実である(③)。
(3) よって、46条の「効力」がYZ間の訴訟に及びうる。
2 そうだとしても、46条4号に該当し、「効力」の適用が否定されないか。
(1) Yが所持していた証拠の存在をZは知らなかったので、Zはかかる証拠の提出ができなかった。また、Yはかかる証拠の提出を怠っていたので「過失」がある。
(2) よって、46条4号に該当し、「効力」はZに及ばない。
3 以上より、Zは主債務の存在を争うことができる。