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民事訴訟法

平成22年旧司法試験 民事訴訟法論文第1問

答案例

第1 小問1
1 Bの訴えは確認の訴えであるところ、確認の訴えは確認対象が無制限になるおそれがあり、また執行力を有しない。そのため、確認の訴えでは確認の利益を厳格に判断する必要がある。そこで、Bの訴えに確認の利益が認められるか。
(1) 確認の利益は、確認判決をすることが原告の権利又は法律的地位の現実の不安・危険を除去するために必要かつ適切な場合に認められると解する。そこで、確認の利益の有無は①対象選択の適否、②即時確定の利益、③方法選択の適否を基準に判断する。
(2) これを本件についてみると、
ア Bの訴えは、債務が存在しないという消極的確認であるが、Bは債務者であるから、積極的確認を求めることはできない。また、本件契約に基づくBのAに対する貸金債務の有無という自己の、現在の、法律関係の確認である。よって、対象選択は適切である(①)。
イ 本件契約の成立につきAB間で争いとなっているので、即時にBの地位を確定する必要がある(②)。
ウ Bは本件契約の債務者であるから、他の方法をとりえない(③)。
(3) よって、確認の利益がある。
2 Aの訴えは本件契約に関するものであるところ、Bの訴えの訴訟係属後になされている。そこで、Aの訴えは二重起訴(142条)に反しないか。「事件」の同一性の判断基準が問題となる。
(1) 同条の趣旨は訴訟不経済、被告の応訴の煩、既判力抵触の恐れにある。そこで、「事件」の同一性は当事者及び審判対象の同一性の有無で判断する。
(2) これを本件についてみると、前訴と後訴の当事者はいずれも同一である。また、審判対象はいずれも本件契約に基づく貸金返還請求権の存否である。
(3) よって、「事件」の同一性が認められ、二重起訴に反する。
3 以上より、Bの訴えは適法だが、Aの訴えは違法である。
第2 小問2(1)
1 Aの訴えは反訴の要件をみたすか。
(1) 「本訴の目的である請求・・・と関連」(146条1項)とは本訴請求と反訴請求の内容又は発生原因が事実上・法律上共通であることをいう。
(2) これを本件についてみると、両請求の訴訟物はいずれも本件契約から発生したものであるから、発生原因が法律上共通である。
(3) また、反訴の要件に抵触する他の事情はない。よって、反訴の要件を満たす。
2 そうだとしても、本件反訴は二重起訴にあたらないか。
(1) 本件反訴は前述と同様に当事者及び審判対象が同一である。しかし、反訴提起では二重起訴の趣旨に反しない。
(2) よって、二重起訴にあたらない。したがって、Aの訴えは適法である。
3 そうであれば、Bの訴えは確認の利益を欠くことにならないか。
(1) Aの訴えは給付訴訟であるから、これが認められれば執行力が付与される。そのため、A勝訴の場合、Aの訴えがBの訴えより適当な方法である。また、B勝訴の場合、Aの訴えとBの訴えでBに対する効力に差異はない。
(2) よって、Bの訴えは方法選択が適切でないから、確認の利益を欠く。したがって、Bの訴えは違法である。
第3 小問2(2)
1 本訴の取下げ後の反訴の取下げには相手方の同意は不要(261条2項ただし書)である。本件ではBは本訴たる訴えを取り下げたところ、その後にAが反訴たる訴えを取り下げているので、Aの取下げにつきBの同意は不要である。よって、Aの取下げは有効とも思える。もっとも、本件の事情に鑑み、Aの取下げは認められないのではないか。
(1) 訴えの取下げは相手方の訴訟追行の権利を害することになるので、相手方が口頭弁論等をした後は相手方の同意を必要としている(261条2項)。そして、同項ただし書の趣旨は本訴の取下げの後の反訴の取下げについては、本訴を取り下げて訴訟による解決を放棄した者が相手方のかかる放棄を認めないことは公平の観点から許されない点にある。
(2) 本件でBが取り下げたのはAの反訴により自己の訴えを継続する実益がなくなったことに起因する。そうであればAの取下げをBの同意なしに認めることはBの訴訟追行の権利を不当に害することになり、公平の観点から上記趣旨が妥当しない。
(3) よって、Aの取下げにはBの同意が必要であると解する。
2 以上より、Aの取下げは無効である。

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