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行政法

平成23年予備試験 行政法論文

答案例1

第1 設問1
1 処分(行訴法3条2項)とは、公権力の主体たる国又は地方公共団体の行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
(1) 本件不同意決定は乙町長が本件条例5条に基づいて一方的に行うものであるから、公権力性がある。
(2) 本件不同意決定によりAに法的効果は生じない。もっとも、本件不同意決定に続く本件条例7条に基づく措置の存在により本件不同意決定に法効果性が認められないか。
ア 本件不同意決定に反して本件施設の新築をすれば、本件条例7条の命令(以下、「本件命令」という。)がなされる可能性がある。また、本件条例8条は「公表するものとする」と規定しているので、本件命令に続いて本件条例8条に基づく公表(以下、「本件公表」という。)が当然になされると考えられる。そして、本件公表においては事前の弁明の機会の提供が義務付けられていることからすると、本件公表は被処分者に重大な不利益を生じさせるものである。
イ しかし、本件条例7条は「中止の勧告又は命令を・・・できる」と規定しているから、乙町長に効果裁量が認められる。そうであれば本件不同意決定の下で本件施設の新築をしても本件命令がなされるとは限らず、また中止の勧告がなされる可能性がある。よって、本件不同意決定により、本件命令が相当程度の確実さをもってなされるとはいえない。
ウ また、Aは本件施設を新築したことで本件公表がなされる可能性がある場合にはその時点で本件命令の取消訴訟を提起すれば足り、現時点で本件不同意決定を取り消す必要性は低い。
(3) よって、本件不同意決定はAに法効果をもたらすものではない。
2 以上より、本件不同意決定は「処分」にあたらない。
第2 設問2
1 Aは乙を被告として(行訴法11条1項1号)、本件不同意決定の取消訴訟(行訴法3条2項)及び本件同意の義務付訴訟(同3条6項2号)を提起する。なぜなら、本件不同意決定を取り消すだけでは本件同意がなされるとは限らないからである(同33条2項参照)。
2 そこで、取消訴訟の訴訟要件を満たすか。
(1) 本件不同意決定は、Aを名宛人としてなされた「処分」であるから、Aに原告適格がある(同9条)。
(2) 本件不同意決定が取り消されればAに本件命令なされることはないので、訴えの利益(同9条1項)がある。
(3) 本件訴訟は2011年7月上旬に提起予定であるが、本件不同意決定がなされた同年2月18日から6ヶ月以内であるから、出訴期間は適法である(同14条1項)。
(4) よって、上記訴訟要件を満たす。
3 上記義務付訴訟の要件を満たすか。
(1) 本件不同意決定は「申請・・・を・・・棄却する旨の処分」(同37条の3第1項2号)である。
(2) Aは本件条例3条に基づいて本件申請をしている(同2項)。
(3) Aは取消訴訟と併合提起している(同3項2号)。
(4) よって、上記訴訟要件を満たす。
4 以上より、両訴訟の訴訟要件を満たす。

答案例2

第1 設問1
1 「処分」にあたる。
2 「処分」とは、公権力主体の行為の内、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているものを指す。具体的には公権力性及び法効果の有無で判断する。
3  
(1) 本件不同意は、乙町長が本件条例3条及び5条に基づき、優越的な立場で一方的に行うものである。よって、公権力性がある。
(2)  
ア 本件条例3条の「同意」(以下、「同意」という。)を得ないで新築等をした場合、町長はその建築の中止の勧告又は命令をすることができる(本件条例7条1号)。
イ 新築工事を着工後、建築の中止を命令された場合、建築主の損害は大きい。また、途中まで完成した建物を他に利用することは本件施設の性質上難しいと言える。よって、本件不同意決定により、本件施設の新築を断念せざるをないという具体的不利益を被る。
ウ もっとも、本件条例7条の文言は「できる」となっており、必ずしも中止勧告又は命令がされるとは限らない。しかし、するか否かにつき町長の裁量にあるので、建築主は勧告又は命令をされないという期待を持つことは事実上難しい。よって、建築主に対して建築中止の抑止力を有する。
(3)  
ア また、本件条例7条の命令に従わない場合は、その旨を公表される。公表されると施設の評判は悪くなるので、命令に従わざるを得ない。そうすると、本件条例8条の公表は本件7条の効果を強化する規定と言える。
イ さらに、本件条例8条2項では、公表の際に弁明の機会の付与を義務付けている。これは、行手法13条1項2号と類似の制度であるから、公表が処分性を有する行為であることが前提となっているといえる。
(4)  そして、本件不同意決定があった後に、本件施設の建築を続行すれば相当程度の確実さをもって、本件条例7条及び8条に基づく措置という結果がもたらされる。
(5) よって、本件不同意決定には法効果性がある。
4 以上より、「処分」にあたる。
第2 設問2
1 乙町を被告として、本件不同意決定の取消訴訟(行訴法3条2項)及び義務付訴訟(行訴法3条6項2号)を併合提起する(行訴法37条の3第3項2号)。
2 Aは本件不同意決定の申請人であるから、原告適格(行訴法37条3第2項、9条)及び訴えの利益がある。
3 本件不同意決定の処分者は乙町であるから、乙町を被告として(行訴法11条1項1号、38条1項)、乙町を管轄する裁判所へ提起する(行訴法12条1項、38条1項)。
4 取消訴訟は処分があったことを知った日から6か月以内に提起しなければならない(行訴法14条1項)。本件では不同意の通知日である2011年2月18日から6か月以内である、同年7月上旬に提起を予定しているので、出訴期間の要件は満たす。

答案構成

第1 設問1
1 「処分」にあたる。
2 「処分」の定義
3  
(1) 公権力性の有無
(2) 法効果性の有無 
 本件条例7条の性質
本件条例8条の性質
(3) 公表の性質
(4) 先行処分で処分性を認めるべき理由
(5) 結論

第2 設問2
1 提起する訴訟。
2 原告適格及び訴えの利益。
3 管轄
4 出訴期間

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