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民事訴訟法

平成23年予備試験 民事訴訟法論文

答案例

第1 控訴審の検討事項
1 本件訴状の被告はYであるが、本件訴状の送達時にYは既に死亡しているので、Yに訴訟係属していない。そして、ZはYの唯一の相続人である。そこで、本件訴訟の当事者はYとZいずれであるか、当事者の確定の判断基準が問題となる。
(1) 当事者の地位は人的裁判籍(4条)等の基準となるので、訴え提起後直ちにかつ明確に判断する必要があるところ、訴え提起直後は訴状の記載が最も明確な基準であるから、訴状を基準とすべきである。もっとも、訴状の当事者欄のみならず、請求の趣旨・原因を含む訴状の記載を客観的合理的に解釈して当事者を決すべきである。
(2) これを本件についてみると、XはXY間の売買契約に基づく代金の支払を求めている。また、訴状の被告にはYの氏名及びその住所が記載され、Zは法定代理人として記載されていた。
(3) よって、本件訴訟の当事者はX及びYである。
2 そうであれば、送達時にYが既に死亡しているので、訴訟係属が認められず本件訴訟は当事者能力という訴訟要件を欠く。そのため、本件訴訟の第一審は原則請求却下判決をすべきであった。よって、XZの訴訟行為及びそれを基礎とした判決は無効となるとも思える。もっとも、訴訟承継(124条1項1号)が類推適用され、Zの訴訟承継が認められないか。
(1) 訴訟係属前に被告となるべき者が死亡し、口頭弁論終結後かかる事実が判明した場合、訴訟要件不存在によって従前の訴訟行為をすべて無効とすると、原告の既存の地位を著しく害し、また訴訟不経済である。そこで、潜在的な訴訟係属が認められる場合には同号を類推適用して相続人による訴訟承継を認めるべきである。
(2) これを本件についてみると、YはXの訴え提起の二日後に死亡しており、Yの相続人Zに送達されているので、潜在的な訴訟係属がある。
(3) よって、同号が類推適用され、Zへの訴訟承継が認められる。
第2 どのような裁判をすべきかの見解
1 控訴審では誰と誰を当事者とすべきか。
(1) 前述のとおりZへの訴訟承継が認められる。
(2) よって、XとZを当事者とすべきである。
2 そうであればZの控訴は控訴期間内に、控訴権者により適法なされたものといえる。よって、控訴却下判決(290条)はすべきでない。
3 では、第一審判決の被告がYとなっているので、Zを被告とする更正決定(257条)をすべきか。なお、更正決定は上訴審でもできると解する。
(1) 同条の趣旨は計算違いや誤記などの誤りが客観的に明確である事項につき速やかに判決を訂正させ、当事者に便宜を図る点にある。そうであれば、客観的に明確でない法解釈に関する事項は更正決定の対象とならないと解する。
(2) これを本件についてみると、被告がYとZいずれであるかは法解釈の問題である。
(3) よって、上記更正決定はすべきでない。
4 その上で、いかなる本案判決をすべきか。
(1) 第一審判決は被告をYとしている点で「不当」(305条)であるから、控訴審は第一審を取り消すべきである。また、Zはその他に主張はしていないので、再度口頭弁論を開く必要はない(308条1項)。
(2) よって、控訴審では控訴裁判所が自判すべきである。
5 以上の通りの裁判をすべきである。

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