※平成29年改正に対応済み
答案例
第1 設問1
1 FはBに対し、所有権に基づいて甲建物の明渡しを請求する。かかる請求が認められるにはFの甲建物の所有及び、Bの甲建物の占有が必要である。
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(1) FはCDと甲建物につき売買契約をしており、甲建物をCDが取得する協議に関するEの書面は偽造であった。よって、FはCD持分は取得するが、E持分は取得しない。他方、BはAから甲建物の贈与を受けたので、Bは甲建物の所有権を取得する。
(2)
ア CD持分につき、FBの優劣はいかに決するべきか。
イ 不動産の物権の取得は登記をしなければ第三者に対抗できない(177条)。そして、この「第三者」とは当事者及びその包括承継人以外の者で登記の不存在を主張する正当な利益を有する者と解する。また、CDは相続によりAの権利義務を包括承継した(896条)。
ウ 本件では、A及びBCを基点に、甲不動産の持分がBFにそれぞれ二重譲渡されたと解する。そして、FはCD持分につき登記を備えた。
エ よって、CD持分につきFはBに対抗できる。また、E持分はBが有することになる。なお、Aは遺言なくして死亡し、Aの法定相続人はCDEである。よって、CDEの各々の法定相続分は3分1である(900条4号)。また、法定相続分が修正させる事情はない。よって、Fの持分は3分の2、Bの持分は3分の1となる。
(3)
ア BFは甲建物を共有するが、共有者FはBに対し、甲建物の明渡しを請求できるか。
イ Fは自己が甲建物の過半数の持分を有していることを理由に、共有物の管理に関する行為(252条)として、Bの甲建物の使用を禁ずことを求める。
ウ しかし、各共有者は共有物の全部について持分に応じた使用をすることができる(249条)。そして、共有者は使用については共有者間の協議がない限り、共有物の全部に及ぶと解する。
エ 本件では、FはBに対し甲建物明渡しの交渉し、明渡期間や立退料を提示しているが、Bが交渉には応じられないと回答している。よって、共有者間で甲建物の使用につき協議が成立したとは言えない。したがって、FはBが甲建物を占有していることをもって明渡しを請求できない。
第2 設問2
1 BはEに対し、債務不履行に基づく損害賠償請求(415条1項)をする。
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(1) EはAが負っていた贈与の目的物の登記義務を包括承継した。そして、この登記義務は共同相続人の不可分債務(430条)であると解する。よって、Eは甲建物所有権全部をBに移転させる義務を負っていた。しかし、EはBに対し自己の持分につき登記をしたが、CD持分については前述のとおりFがBに対抗できるので、CD持分の移転登記は履行不能となった。また、BがCD持分を取得できないという損害と、登記義務の履行不能と損害との間に因果関係も認められる。
(2) もっとも、CDがその持分につきFに登記を移転したことは、Eに無断で行ったものである。また、Eは自己の持分はBに登記をしている。よって、本件履行不能について、Eに帰責事由(415条1項但書)がない。
(3) よって、損害賠償請求はできない。