答案例
設問1
1
(1)
ア 処分禁止の仮処分(民事保全法53条1項)を申し立てる。
イ Yが甲土地につき、所有権移転登記をした場合、Yに対する訴えが無意味になる。そこで、処分禁止の仮処分をすることで、仮にそのようなことをしても、民事執行時に他人名義への所有権移転登記を否定できる。
(2)
ア 占有移転禁止の仮処分(民事保全法25条2第1項)を申し立てる。
イ Yが甲土地の占有を第三者に移転した場合、民事執行時に判決の効力が第三者へ及ばない可能性がある。そこで、占有移転禁止の仮処分をすることで、占有者への執行を容易にできる(同法62条)。
2
(1) 被告は原告に対し、甲土地につき真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続きをせよ。
被告は原告に対し、甲土地を明け渡せ。
との判決を求める。
3
(1) イ平成27年6月1日、XとAは甲土地の売買契約をした。
(2) ウYは甲土地を占有している。
設問2
1 Yは対抗要件具備による所有権喪失の抗弁を主張する。
2 不動産の譲渡は登記がなければ第三者に対抗できない(民法177条)。これは不動産の所有権が二重譲渡できることが前提となっている。
3 よって、AX間とAY間の売買契約は両立する。もっとも、本件ではYが登記を備えたので、Xに対抗できる。その結果、Xは所有権を喪失するので、Xの主張は排斥される。
4 以上より、Yの反論は抗弁となる。
設問3
1 エYは本件第2売買契約の際、本件第1売買の存在を知っていた。
2
(1) 背信的悪意者は民法177条の第三者にあたらない。
(2) そして、これはYの抗弁と両立する。
(3) 背信的悪意者とは、二重譲渡において、先の売買契約を知り、かつ先の買主に害意を持っていたものをさす。
(4) そこで、先の売買契約につき悪意である旨の主張をする。
設問4
1 悪意
(1) Yは本件第2売買契約時にAX間の売買契約の存在を知らないと主張する。
(2) また、本件第2売買契約の前に甲土地が1000万円程度であると知っていた。
(3) 1000万円を土地を500万円で買えるならば、その理由を調査するのが通常である。また、念書からYが甲土地を転売予定であることが推認される。転売予定であれば尚更甲土地が相場の半額程度で買えるか調査するといえる。
(4) よって、YはAX間の売買契約の存在を知っていたと推認される。
2 背信性
(1) Yの供述によると、Aから謝礼を依頼されたとされる。
(2) 本件第2売買契約の後にAから謝礼の依頼をされた場合にYが念書を書くのは不自然である。
(3) むしろ、Yが本件第2売買契約をする際に条件として念書を書いたと推認する方が自然である。
(4) そうすると、Yは本件第2売買契約当初から転売をする予定であったと推認される。
(5) そして、YがAX間の売買契約を知っていれば、X以外に転売先は見つからないと考えられる。よって、Yは転売先をXと考えていたと推認される。
(6) さらに、YはXに対し、2000万円で売却を持ち掛けてはいる。本件第2売買契約の後にこのような話をしたことで、高値で売却する目的があったと推認できる。