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民事実務基礎

平成29年予備試験 民事実務基礎

設問1
1 設問1
(1) 小問(1)
ア 占有移転禁止の仮処分命令(民事保全法25条の2)の申立てをする。
イ 既判力は口頭弁論終了後の承継人に及ぶ(民訴法115条1項)。よって、口頭弁論終了前にYが占有を移転すると、承継人に本件判決の効力が及ばない。
ウ そこで、上手段をとることで仮処分後の承継人に対して、本件判決で強制執行が可能となる。
(2) 小問(2)
所有権に基づく返還請求権としての目的物引渡請求権
(3) 小問(3)
① 平成27年3月5日当時本件壺を所有していた。
② 平成28年5月1日、XはBから本件壺を買った。
③ Yは本件壺を占有している。
(4) 小問(4)
ア Xが本件壺の即時取得(民法192条)を主張する。
イ 占有改定により占有を開始した場合、即時取得は認められない(判例)。
ウ XはBから本件壺を買ったが、占有改定により占有を開始した。
エ よって、即時取得は認められない。
2 設問2
(1) 小問(1)
ア 二重譲渡につき、対抗要件具備による所有権喪失の抗弁
イ 即時取得による所有権喪失の抗弁
(2) 小問(2)
ア 対抗要件具備による所有権喪失の抗弁は主張しない。
イ 本件ではAを基準として、B及びYへの二重譲渡がある。動産譲渡の対抗要件は引渡しである(178条)。
ウ BはYより先に本件壺の占有を取得した。
エ よって、YはBに所有権を対抗できないので、Bが確定的に本件壺の所有権を取得したと解される。したがって、Bからの承継人であるXにも対抗できない。
3 設問3
(1) 小問(1)
ア 文書は成立が真正であることを証明しなければならない(民訴法228条1項)。
イ また、私文書は本人の押印があれば真正に成立したものと推定される。ここで、「押印」とは意思ある押印と解する。
ウ そして、作成名義人の印影が、本人の印章に基づくものであれば本人の意思に基づく押印であると事実上推定される。そして、民訴法228条4項により文書成立の真正が推定される。
エ 本件では署名はない。また、Bは自己の印章による印影でないと主張する。
オ そこで、Bの印章によるものである立証がされなければ、本件領収書の成立の真正は認められず、形式的証拠力がないと判断する。
(2) 小問(2)
ア Bの150万円を受領していない主張への反論
(ア) BはXが主張する代金支払い日の翌日にAに200万円を弁済したことを認めている。
(イ) よって、借金200万円を一括で返済するのは臨時的に大きな収入があったと推認できる。
(ウ) Bは父親から借りたと主張している。しかし、父親の自宅に200万円の現金がおいてあることは不自然である。仮に父親が200万円の現金を自宅に置くほど裕福であればBがAから200万円を借りていたことが不自然である。
(エ) よって、Bが父親から金銭を借りた主張は不合理な点がある。
(オ) また、Xの主張する契約日にXが150万円を出金している。150万円もの大金を出金することは稀である。よって、Xが150万円を支払った旨の主張と整合する。
イ Bに売っていない事実主張への反論
(ア) Bは面識のないXを家に入れて本件壺をみせたことを認めている。
(イ) 面識ない人を壺を見せるためだけに招くことは不自然である。
(ウ) よって、本件壺に関して取引があったと推認できる。
ウ 以上よりXB間で売買契約が存在し、150万円の支払いがあったことは明白である。

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