答案例
設問1
1
(1) 罪証隠滅の恐れがあるかは、①どのような証拠を、②どのように隠滅するのか、③客観的危険性及び④主観的危険性があるかで判断すべきである。
(2)
ア 本件では証人(①)に対して、威迫等による証言内容の変更(②)の働きかけが考えられる。
イ もっとも、AはVWと面識がないので、働かけることができない(③)。
ウ しかし、BはAの交際相手であるから可能である(③)。さらに、AはVを押して転倒させたことを否定していた。よって、働きかけをする動機がある(④)。
(3) 以上より、Aに罪証隠滅の恐れがある。
設問2
1 間接証拠である。
2
(1) b記載の事実は、Vが倒れた直後の行為に関するものである。
(2) よって、b記載の事実があった時のAの感情はVが倒れた時の感情であると推認できる。
(3) bによると、AはVに馬乗りになり、「この野郎」といいながら右腕を振り上げている。そこで、AがVに対し、暴力行為をするほどの怒りがあると推認できる。
(4) 以上より、AがVを押し倒すほどの怒りがあったと推認できる。
設問3
1 証拠の類型 刑事訴訟法316条の15第1項5号ロ
2 類型証拠が必要な理由
(1) Vの供述録取書にはVがAに押された後の記憶がない旨及び気が付いたときには病院にいた旨の記載がある。
(2) Vが倒れる前から記憶がない可能性がある。そこで、Vの証言の信ぴょう性に疑義がある。
(3) よって、録取書記載の事実は、Vの証言という直接証拠の証明力を弾劾する補助事実にあたる。故に録取書はVの証言対する弾劾証拠であると考えられる。
設問4
1 甲4号証
(1) 甲4号証は犯行の再現状況を写真に収めたものである。もっとも、同写真はVの供述通りに警察官が動き、それを撮影した写真である。よって、同写真はVの供述証拠であると解される。
(2) そして、甲4号証の立証趣旨は写真の記載内容の通りの犯行が行われたことであると考えられる。また、この立証趣旨が要証事実である。そうすると、要証事実との関係でその内容の真実性が問題となる供述証拠であるから、甲4号証は伝聞証拠である。
(3) 以上より、弁護人は伝聞証拠の証拠能力が原則否定されるべきとの判断から326条1項に基づき不同意をした。
2 甲5号証
(1) 甲5号証は犯行現場そのものを撮影した写真である。
(2) 写真は撮影・記録・現像のいずれの過程も機械がするので誤りが混入する可能性が低い。よって、非伝聞である。
(3) よって、326条の同意がなくても証拠能力がある。
(4) もっとも、弁護人は証拠調べの決定の際には意見を述べることができる(刑訴規則190条2項)。そこで、意見として異議を述べた。
設問5
1 小問(1)
ア 訴訟関係人は証人の供述を明確にするため、写真を利用することができる(規則199条12第1項)。
イ 本件ではVがAから押し倒された状況は口頭の説明より、写真を示して説明した方が正確である。
ウ そこで、検察官に写真の提示を許可した。
2 小問(2)
証人尋問において写真が示され、かつ証人が写真を引用すれば、引用した限度で写真は証言の一部となる。よって、その限度で写真内容の事実認定が可能である。
設問6
1 小問(1)
(1) Aの公判期日における供述は、公判期日前の検察官面前調書の供述と相反する。
(2) そして、本件調書後にBはAの子を妊娠が判明しており、Aが有罪になることにより強い利害関係を有するに至った。また、証人尋問において、検察官面前調書につき、嘘を話していない旨及び録取された内容と確認した後署名押印した旨を証言した。
(3) よって、公判期日の供述よりも、公判期日前に作成された甲7号証の方が信用すべき情況の下に作成されたと言える。
(4) よって、甲7号証は321条1項2号の書面に該当するので、証拠能力がある。
2 小問(2)
(1) WとVの証言ではAの暴行の存在とそれによるVの傷害結果の発生を立証できない。
(2) よって、甲7号証の取り調べの必要性がある。