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刑事実務基礎

平成30年予備試験 刑事実務基礎

答案例

設問1
1 罪証隠滅の恐れがあるかは①どのような証拠につき、②どのような方法で隠滅するか③客観的危険性及び④主観的危険性があるかという観点で判断する。
2 本件は窃盗事件であるから、窃盗品(①)を、廃棄・隠匿する(②)恐れがある。本件盗品は容易に廃棄・隠匿が可能である(③)。また、共犯者に罪をなすりつける危険性がある(④)。
3 保釈請求時には共犯者が不明であった(③)。そこで、共犯者(①)と口裏合わせする(②)恐れがある。
4 本件では目撃者W2(①)がおり、Aが目撃者に威迫等による虚偽事実供述の働きかけ(②)をする可能性がある。AとW2は面識がないが、目が合っていること及びW2が犯行現場付近に住んでいる(③)。
5 Aは犯行を否認しているので、自白の場合より主観的危険性がある(④)。
設問2
1 ①の証拠
(1) 証拠の類型 316条の15第1項3号
(2) 理由
ア 目撃者の位置関係や犯行時の照度により、犯行視認状況に疑いがあれば、目撃証言に対する弾劾事実になる。
イ そこで、甲8号証の証明力を判断するために重要である。
2 ②の証拠
(1) 証拠の類型 316条の15第1項5号ロ
(2) 理由
ア 供述内容が取調をした者によって異なっていれば、その供述書は互いに弾劾証拠となる。
イ そこで、甲8号証の証明力を判断するために重要である。
3 ③の証拠
(1) 証拠の類型 316条の15第1項6号
(2) 理由
ア 本件ではAの犯人性が争点である。そして、他の目撃証言はAの犯人性に対する弾劾証拠となる可能性がある。
イ そこで、甲8号証の証明力を判断するために重要である。
設問3
1 検察官は訴因につき、「氏名不詳者と共謀の上」から「AB共謀の上」へ変更する手続きをとる(316条の5第2号、312条1項)。また、被害品につき、本件CDを追加する手続きをする。
2 さらに316条の21第1項に基づき、AB共謀の事実を証明要諦事実に追加して、裁判所へ提出し、弁護人へ送付する。
設問4
1 小問1
(1) 間接証拠である。
(2) 直接証拠とは、証拠から推認過程を減らずに直接要証事実を認定できるものを指す。
(3) W2の供述により、犯行日時に、Aが被害車両から被害品らしき物を運び出したことが推認される。しかし、Aの犯行そのものをみていないので、供述から直接要証事実を認定できない。そこで、W2の供述は要証事実を推認する事実を証明する間接証拠である。
2 小問2
(1) 裁判長は必要と認めるときは訴訟関係人に釈明を求めることができる(刑訴規則208条1項)。
(2) BとW2の証人尋問はいずれもAの犯人性を立証するために行うものである。そこで、Bのみで足りるとすればW2の証人尋問の必要性がない(刑訴規則189条の2参照)。
(3) そこで、W2の証人尋問の必要性を釈明させる必要があったので、裁判長は釈明を求めた。
3 小問3
(1) 共犯者の供述は、相手を自己の犯罪に引っ張り込む可能性がある。
(2) Bは、Aと共犯者である旨供述している。一方で、Aは犯人性を否定している。
(3) そこで、W2も証言も必要であると釈明する。
設問5
1 公判前整理手続後は、原則証拠調べを請求できない(316条の32第1項)。
2
(1) そこで、本件が「やむを得ない自由」(同項)にあたるか。
(2) 本件では公判前整理手続後にBがVに弁償している。よって、公判前整理手続ではこの証拠を提出できない。
(3) よって、やむを得ない事由に該当する。
3 以上より、証拠提出可能である。
4
(1) もっとも、弁護士は依頼者の意思を尊重しなければならない(弁護士職務基本規定22条1項)。
(2) 本件ではAは犯人性を争っている。一方で、提出予定の証拠は犯人性を自白した上での情状証拠である。
(3) よって、証拠提出にあたってはAの意思を十分に確認する必要がある。

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