スポンサーリンク

刑事訴訟法

平成5年旧司法試験 刑事訴訟法論文第2問

答案例

1 共謀した事実は刑罰権の存否及びその範囲を画する事実、すなわち主要事実であるから、かかる事実の立証には厳格な証明(317条)が必要である。そこで、乙の供述を証拠として用いるにはかかる供述に証拠能力が認められなければならない。
2 乙の供述を証拠として用いる方法には、共同被告人乙に証人尋問をする方法が考えられる。しかし、証人尋問において被告人の反対尋問権(憲法37条2項前段)を保障すべきところ、共同被告人乙には黙秘権(憲法38条1項、刑訴法311条1項)が保障されている。そして、黙秘権は反対尋問権に優先すると解されるから、反対尋問権が十分に保障されない。よって、共同被告人に証人適格は認められない。以上よりかかる方法は用いることができない。
3 そこで、甲及び乙の審理を分離した上で、乙に証人尋問ができないか。
(1) この点、判例は元共同被告人たる証人は証言拒絶権(146条)の限度で黙秘権を保障されることを理由に、かかる方法を認める。
しかし、かかる方法を採れば、乙が無罪主張をする前提で、黙秘権を行使する場合、有罪判決を受ける恐れがあることを理由とする証言拒絶権の行使をせざるを得なくなる。また、乙が証言をする場合、偽証罪の制裁の下に自己に不利な事実を洗いざらい証言することを強制される。そうであればかかる方法で乙を証人尋問することは乙の黙秘権を中心とする防御活動を著しく阻害することになるので、妥当でない。
(2) よって、かかる方法で乙に証人尋問できない。
4 では、共同審理のままで乙に被告人質問する方法は採れないか。共同被告人の公判廷における供述に証拠能力が認められるかが問題となる。
(1) この点、判例は甲に反対質問権(311条3項)が保障されていることを理由に証拠能力を認める。
しかし、反対質問に対して乙が黙秘権を行使すれば、反対質問は無意味である。よって、かかる供述に証拠能力は原則認められない。もっとも、乙が黙秘権を行使しない結果、反対質問により事実上反対尋問権が保障された特別の事情があれば証拠能力が認められると解する。
(2) 以上より、かかる方法では乙の供述を用いることができる場合がある。
5 また、乙の公判期日外の供述調書を証拠として用いることができるか。
(1) かかる調書は「公判期日における供述に代」わる「書面」である。また、乙の供述内容の真実性を立証するためにかかる調書を提出する場合、かかる調書は伝聞証拠にあたる。よって、被告人の同意(326条1項)がない限り原則証拠能力が否定される。
(2) もっとも、伝聞例外(321条以下)に該当し、証拠能力が肯定されないか。
ア 甲にとって乙は第三者であるから、かかる調書の伝聞例外該当の有無は321条1項各号で判断すべきである。
イ よって、同号の要件を充足すれば伝聞例外として証拠能力が肯定される。
(3) 以上より、かかる方法では乙の供述を用いることができる場合がある。

スポンサーリンク

-刑事訴訟法

© 2024 予備試験・司法試験合格ノート