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その他

基礎法学(法学入門)

法の意味

定義

法とは、国家権力の強制力を伴った社会規範である。

社会規範

社会規範とは社会のルールを指す。社会規範の例として、法の他に道徳がある。

強制力

道徳は守るべきものであるが、守らなくても国家によって強制されない。例えば、スーパーでレジ待ちをしている場合に順番抜きをすることは道徳に反するが、警察によって順番を戻されるということはない。

これに対し、法を守らなければ警察に捕まったり、財産を差し押さえられたりして、法を守ることを強制される。

法源

裁判においては裁判官が当事者の言い分を聞いた上で判決を下す。その際、当事者どちらの言い分が正しいかを判断するための基準が必要である。この基準を法源という。法源は制定法と非制定法に分けられる。

制定法

制定法とは、一定の手続きに従って制定され、文章で表現されている法である。成文法もほぼ同じ意味である。

制定法は制定する機関によって、法の名称が異なる。(例:国会が制定すれば法律、都道府県・市町村の議会が制定すれば条例となる。)

非制定法

非制定法とは、一定の手続きに従って制定されていない法である。不文法もほぼ同じ意味である。非制定法は一定の制定手続きを経ていないので、その制定過程の違いにより分類することができる。主に慣習法、判例法、条理に分類される。

慣習法

一定の範囲の人の社会生活における慣習を法源として利用すれば、その法源は慣習法と呼ばれる。

判例法

判例を法源として利用すれば、その法源は判例法と呼ばれる。

※判例については後述

条理

条理とは、適用すべき法源がない場合に基準となるものである。条理と常識とほぼ同じ意味である。

法の分類

法は、様々な角度から見ることで、いくつかの分類ができる。ここでは3つの分類方法を説明する。

公法と私法

公法とは、国家と国民の関係を規定した法である。(例:憲法、刑法、刑事訴訟法、民事訴訟法、行政事件訴訟法)

私法とは、国民同士の関係を規定した法である。(例:民法、商法、会社法)

実体法と手続法

実体法とは、権利・義務の発生や消滅などを規定した法である。(例:民法、刑法)

手続法とは、実体法で発生した権利などを実現するための手続きを規定した法である。(例:民事訴訟法、刑事訴訟法)

強行規定と任意規定

強行規定とは、当事者の合意があっても効力が妨げられない規定である。

任意規定とは、当事者の合意で効力が発生しない規定である。

法の優先関係

新法優先の原則

後に成立した法律は、前に成立した法律に優先する。

特別法優先の法則

複数の法律が一般法と特別法の関係にある場合、特別法は一般法に優先する。(例:民法と会社法では、前者が一般法、後者が特別法である。よって、民法と会社法の規定で矛盾が生じる場合、会社法の規定が優先して適用される。)

法の効力

法律は国会の議決により成立し(憲法59条)、その後官報に掲載される(公布)。そして、法律は施行されて初めてその効力を生じる。

法律の施行日は、法律で別に定めた場合を除き、公布の日から起算して20日を経過した日である(法の適用に関する通則法2条)。

法解釈

解釈の必要性

法は不特定多数人を対象としているから、その文言は抽象的にならざるを得ない。しかし、抽象的な文言では社会規範として十分な機能を果たせない。

そこで、法を解釈して運用する必要がある。解釈とは、法の意味・内容を捉えることである。

ここでは次の法が存在するとして解釈の手法を説明する。

「公園内では野球の軟式ボールを使った遊びは禁止。」

文理解釈

文理解釈とは、法の文言をそのまま読み取る解釈である。

→文理解釈では文字通り、軟式ボールでの遊びが禁止される。

論理解釈

論理解釈とは、法の目的や条文の意味を考慮して行う解釈である。主なものに、拡張解釈、縮小解釈、類推解釈、もちろん解釈、反対解釈がある。

拡張解釈

拡張解釈は、法の文言の意味を拡大して捉える解釈である。

→法は軟式ボールが他人にあたって危険であるから、軟式ボールの遊びを禁止している。よって、軟式ボールだけでなく、同じボールに属するサッカーボールの遊びも禁止される。

縮小解釈

縮小解釈は、法の文言の意味を縮小して捉える解釈である。

→法は軟式ボールが他人にあたって危険であるから、軟式ボールの遊びを禁止している。よって、軟式ボールでキャッチボールをすることは禁止されるが、軟式ボールをお手玉のように利用して遊ぶことは禁止されない。

類推解釈

類推解釈は法が規定していないことにも、法を及ぼす解釈である。

→法は軟式ボールが他人にあたって危険であるから、公園での軟式ボールの遊びを禁止している。よって、公園の駐車場での軟式ボールの遊びも禁止される。

※拡張解釈と類推解釈は厳密に区別できるものではない。

もちろん解釈

もちろん解釈とは、法は規定していないが、法の趣旨・目的からして当然に法が適用されるとする解釈である。(類推解釈の一種である。)

→法は軟式ボールが他人にあたって危険であるから、公園での軟式ボールの遊びを禁止している。よって、軟式ボールより危険な硬式ボールでの遊びも当然に禁止される。

反対解釈

反対解釈とは、法が定めていない事項について、反対の結果を導き出す解釈である。

→軟式ボールは禁止されているが、硬式ボールでの遊びは禁止されていない。

法の趣旨を、軟式ボールが他人にあたる危険を防止することにあると解すれば、硬式ボールの遊びは禁止されていないという解釈は妥当ではない。

では、法の趣旨が次の場合はどうであるか。

法が適用される公園は、プロ野球選手の専用の公園である。しかし、プロ野球の試合がない日は一般に開放している。そして、プロ野球選手は硬式ボールしか使わないのに、軟式ボールが公園内に散らばっていると練習の邪魔になる。そこで、軟式ボールの使用は禁止される。

このような趣旨であれば、硬式ボールを禁止してないという解釈は成り立ちうる。

以上からわかるように、解釈するには法の趣旨・目的を考えることは必須である。

裁判と訴訟

定義

訴訟とは、紛争の解決にあたり、当事者以外の第三者に判断を仰ぐことである。そして、この第三者が裁判所又は裁判官であれば、その訴訟は裁判となる。

訴訟の種類

民事訴訟

民事訴訟とは、国民同士の紛争(民事事件)に関する訴訟である。訴えた方を原告、訴えられた方を被告と呼ぶ。

刑事訴訟

刑事訴訟とは、国民に刑事罰に科すか否かを決める訴訟である。訴えるのは検察官であり、訴えられた国民を被告人と呼ぶ。

行政事件訴訟

行政事件訴訟とは、国民と行政の紛争(行政事件)に関する訴訟である。訴えるのは国民であり、訴えられるのは行政である。

三審制

三審制とは、同じ事件について3回まで裁判の審理を受けられる制度を指す。そして、1回目の裁判を第一審、2回目の裁判を第二審、3回目の裁判を第三審という。

また、第一審の判決に対する不服申し立てを控訴と呼び、第二審の判決に対する不服申し立てを上告と呼ぶ。

原則、第一審が地方裁判所、第二審が高等裁判所、第三審が最高裁判所の管轄である。しかし、第一審が簡易裁判所の管轄に属する場合、民事訴訟と刑事訴訟では第二審、第三審の裁判所の管轄に違いがある。

民事訴訟 刑事訴訟

最高裁判所
↑上告
高等裁判所
↑控訴
地方裁判所

高等裁判所
↑上告
地方裁判所
↑控訴
簡易裁判所
最高裁判所
↑上告
高等裁判所
↑控訴
地方裁判所
最高裁判所
↑上告
高等裁判所
↑控訴
簡易裁判所

上訴の審理方式

上訴とは、控訴及び上告を指す。

例えば、控訴がされると第二審(控訴審)は第一審で審理された事件を再度審理する。ここで、第二審が審理する際は、第一審で審理された内容を基に裁判をするのか、それとも第一審で審理された内容を考慮せず、独立して審理をするのかという問題が生じる。これについては、迅速・公正な裁判を実現するならば、第一審で審理された内容を引き継ぐべきである。

そして、上訴をどのようにして審理するか、すなわち審理方式には、続審、事後審、覆審がある。

続審

続審とは、第一審で審理した主張や証拠に加えて、第二審における主張や証拠を考慮して審理する制度である。日本の民事訴訟は続審であると解される。

フィギュアスケートでいうと、1回目の演技に加えて、2回目の演技を併せて評価することである。

事後審

事後審とは、第一審で審理した主張や証拠を基に、第一審の判断が妥当か否かを第二審が審理する制度である。日本の刑事訴訟は事後審であると解される。

フィギュアスケートでいうと、1回目の演技に対して、再度評価をすることである。(2回目の演技はしない。)

覆審

覆審とは、第一審で審理したことを考慮せず、第二審で新たに独立して審理する制度である。

フィギュアスケートでいうと、1回目の演技は無関係に、2回目の演技を評価することである。

法律審と事実審

事実審とは、訴訟において事実問題と法律問題を併せて審理するものである。これに対し、法律審とは、法律問題だけを審理するものである。

民事訴訟では、第一審と第二審が事実審で、第三審は法律審である。刑事訴訟では第一審が事実審であるが、第二審及び第三審も事実問題を審理することがある。

判例

判例とは、拘束力を有する裁判所の見解を指す。判例があることで、統一的な法解釈が可能となる。

ところで、裁判官は憲法および法律のみに拘束される(憲法76条3項)ので、必ずしも判例に従い判決を下す必要はない。もっとも、同じ事例であるにも関わらず、裁判官によって結論が異なれば法の下の平等(憲法14条1項)違反の問題が生じる。よって、判例に事実上の拘束力を認める必要性がある。

また、判例となり得るのは原則、最高裁判所の見解である。

用語

「場合」と「とき」

いずれも条件を示す場合に使用される用語である。「場合」は「とき」より大きな条件を示す。

例:子供と料理をする「場合」、火を使う「とき」は特に目が離せない。

「又は」と「若しくは」

いずれも選択的接続詞である。「又は」は「若しくは」より大きなくくりである。

例:甘口若しくは中辛のカレー又は牛丼が食べたい。

「並びに」と「及び」

いずれも併合的接続詞である。「並びに」は「及び」より大きなくくりである。

例:甘口及び中辛のカレー並びに牛丼を買ってきた。

「みなす」と「推定する」

いずれも、ある事柄を別の事柄と同一視する際に使用される。

「みなす」の例:胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。(民法886条1項)

「推定する」の例:妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。(民法772条1項)

「推定する」は、反対の証明(反証)をすることで、覆すことができる。上記の例でいえば、夫はDNA鑑定をして自分の子でないことを証明すれば、推定はされない。

「直ちに」と「遅滞なく」と「速やかに」

いずれも義務を課す際に、せかすために使われる用語である。せかしの度合いは、下記のようになり、「直ちに」が最も早く行動をすることを求められる。

「直ちに」>「遅滞なく」>「速やかに」

学説

学説とは、学者の主張である。法学者は条文や判例を研究し、解釈論を主張することが主な仕事である。

また、学説の中で多数に支持されている説を通説と呼ぶ。通説は多数に支持されているだけでなので、通説に「正しい」という意味はない。

 

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