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憲法基本書

憲法1(憲法総論・基本的人権の内容・国民の義務)

憲法総論

憲法とは

憲法とは国家の存在を基礎づける基本法を指す。

憲法の意味については様々な角度から説明が可能であるが、ここでは試験対策上重要な憲法の意味を説明する。

試験対策上重要なのは、「立憲的意味の憲法」である。

立憲的意味の憲法

立憲的意味の憲法とは、「憲法の目的は国家権力を制限して、国民の権利・自由を保護することにある」こと意味するものである。

というのも、歴史を振り返ると、国家権力によって国民の人権が侵害されたことが多くあった。そこで、そのようなことがないように、憲法によって国家権力を縛っている。

例えば、会社や学校で人権侵害を受けた場合、公的機関(労働基準監督署、警察、裁判所)に助けを求めるのが通常である。しかし、国家権力に人権侵害をされた場合、公的機関は国家権力そのものであるから、公的機関に助けを求めるということにはならない。そこで、憲法で国家権力を拘束することで、国家権力によって国民が人権侵害されないようにしている。

法の支配

内容

法の支配とは、人による支配を排除し、権力を法で拘束することで国民の権利・自由を保護する考えである。法の支配の概念は、憲法の規定及びその解釈において随所で顔を出す(例:適正手続の保障)。

法治主義との違い

法の支配と似て非なるものに、法治主義がある。法治主義は、法によって権力を制限する点で法の支配と同じである。

しかし、法治主義においては、法の中身が適正であることは要求されない(形式的法治主義)。

憲法の基本原理

憲法の基本原理は次のものである。

  • 国民主権
  • 基本的人権の尊重
  • 平和主義

ここでは国民主権について説明する。

国民主権

主権の意味

主権には次の3つの意味がある。

  • 統治権(ポツダム宣言8項)
  • 最高独立性(憲法前文3項)
  • 最終決定権(憲法前文1項、憲法1条)

国民主権の意味

このうち、国民主権で使われる「主権」は、「最終決定権」を指す。よって、国民主権とは、国民が国の政治の在り方を最終的に決定することを意味する。

国民の意味

ここで、国民主権における「国民」とはいかなる者を指すかが問題となる。これについては、国民主権の本質をどのように捉えるかで変わってくる。

結論からいうと、

  • 「正当性の契機」の立場→「国民」とは全国民を指す。
  • 「権力的契機」の立場 →「国民」とは有権者を指す。※「国民」=有権者とすれば、選挙権を有しない者は、国民主権における「国民」ではないことになる。

「正当性の契機」とは、国民主権の本質を、「国家権力の正当性のよりどころが、究極的に国民に存する」と捉える立場である。

これに対し、「権力的契機」とは、国民主権の本質を、「主権者である国民が、国のあり方を最終的に決定する権力を有することにある」と捉える立場である。

※ここの話は抽象的・概念的なもので完璧に理解できるものではない。また、試験対策上重要な箇所ではないので、分からなくても気にせずとばす。

権力行使

国民主権を実現するための方法として、日本国憲法は原則、代表民主制を採用している(全文1項、43条1項)。また、直接民主制は、代表民主制の補完的な役割として、日本国憲法に規定されている(79条2項、95条、96条1項など)。

※代表民主制とは、国民から選挙で選ばれた代表者が政治を担当することである。直接民主制とは、国民自ら直接政治に関わることである。

基本的人権の内容

人権の特徴

人権には、固有性、普遍性、不可侵性という特徴がある。

固有性

固有性とは、人権は、憲法や天皇から恩恵として与えられるものではなく、人間であることにより当然に有する権利であることを意味する。

普遍性

普遍性とは、人権は、人種・性・身分になどに関係なく、人間であれば当然に享受できる権利であることを意味する。

不可侵性

不可侵性とは、人権は、公権力によって侵されない権利であることを意味する。もっとも、「公共の福祉」により制限を受けることがある。

人権の分類の考え方

人権は国家との関係で、自由権、参政権、社会権に分類できる。

自由権

自由権とは、個人が、国家からの介入なく自由な意思決定と活動をすることを保障する人権である。「国家からの自由」と呼ばれる。

例:精神的自由権、経済的自由権、人身の自由

参政権

参政権とは、国民が国政に参加する権利である。「国家への自由」と呼ばれる。

社会権

社会権とは、社会的・経済的弱者が、国家に対し積極的な配慮を求める権利である。「国家による自由」と呼ばれる。

日本国憲法による人権の分類

日本国憲法で保障される人権は次のように分類できる。

精神的自由権

思想良心の自由(19条)、信教の自由(20条)、表現の自由(21条1項)など。

経済的自由権

職業選択の自由(22条1項)、財産権(29条1項)など。

人身の自由

奴隷的拘束からの自由(18条)、被疑者・被告人の権利(33~39条)など。

受益権

裁判を受ける権利(32条)など。

社会権

生存権(25条1項)、労働基本権(28条)など。

参政権

公務員選定罷免権(15条1項)など。

※人権よってはこれらの複数の性質を有していることがある。(例:商品CM(営利的な表現)は、表現の自由(精神的自由権)と経済活動の自由(経済的自由権)の2つの性質を有している。)

※これらの人権については後の講義で詳しく学習するので、現時点では人権分類についておおまかなイメージを持っておくだけでよい。

国民の義務

日本国憲法は国民の義務を次のように定めている。

  • 教育の義務(26条2項)
  • 勤労の義務(27条1項)
  • 納税の義務(30条)

ところで、立憲的意味の憲法の立場からすると、憲法は国家を制限するものであって、国民を制限するものではない。

よって、この立場では日本国憲法に国民の義務を定める必要はない。

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